自己破産について弁護士へ相談すると、収入や支出、財産、借入先などを確認するため、さまざまな資料の準備を求められることがあります。その中でも「家計状況収支表」または「家計全体の状況」と呼ばれる書類は、毎月のお金の流れを整理するための重要な資料の一つです。
ただし、書類の名称、様式、対象期間、必要な添付資料は、申立先の裁判所、依頼する弁護士や司法書士、世帯の状況などによって異なる場合があります。「事前に直近3か月分を書く」「同居家族全員の収入証明が不要」といった一律の説明はできません。
この記事では、私が自己破産について相談した際に家計を整理した体験と、裁判所や法テラスが公開している一般情報を明確に分けながら、家計状況収支表を書くときの基本的な考え方を紹介します。個別の案件について判断するものではないため、実際に提出する際は、担当の弁護士や司法書士、申立先の裁判所へ確認してください。
自己破産の相談で準備を求められることがある主な書類

自己破産の申立てでは、家計状況収支表だけでなく、本人や家族、債務、収入、財産などに関する資料が必要になる場合があります。ただし、必要書類はすべての人に共通するわけではありません。
裁判所が公開している申立書式を見ると、債権者一覧表、陳述書、財産目録、家計収支表などが用意されています。たとえば松江地方裁判所の案内ページでは、破産申立てに関する書式として、申立書、債権者一覧表、陳述書、財産目録、家計収支表などが公開されています。
本人や家族の状況を確認する資料
本人確認や世帯の状況を確認する資料として、住民票などの提出を求められることがあります。住民票については、本籍、続柄、世帯全員の記載など、必要とされる項目が手続きによって異なる可能性があります。
法テラスの民事法律扶助を利用するための審査では、本人および同居家族の人数を確認する資料として、申込みから3か月以内に発行され、本籍、筆頭者、続柄、世帯全員が記載された住民票が案内されています。ただし、これは法テラスの審査に関する案内であり、裁判所へ提出する破産申立書類と完全に同じとは限りません。
収入や勤務状況を確認する資料
給与を受け取っている場合は、給与明細、源泉徴収票、課税証明書などが必要になることがあります。年金を受給している場合は年金額が分かる資料、事業をしている場合は確定申告書や帳簿などを求められることも考えられます。
法テラスの審査資料としては、給与生活者の場合、直近の給与明細や源泉徴収票、課税証明書などが例示されています。実際にどの資料を何か月分用意するかは、相談先から受けた案内を優先してください。
債務や財産を確認する資料
借入先や残高を確認するため、カード会社や金融機関から届いた利用明細、請求書、督促状、契約書などを整理することがあります。預貯金、不動産、自動車、保険、退職金の見込額など、財産に関する資料が必要になる場合もあります。
必要となる資料は、所有している財産や契約内容によって変わります。資料を自己判断で処分せず、古い通帳や解約済み口座に関する書類も含めて、担当者に確認することが大切です。
自分で内容を整理する主な書類
裁判所の書式や地域によって名称は異なりますが、一般的には、次のような内容を書面にまとめることがあります。
- 借入先や現在の残高などを記載する債権者一覧表
- 借入れが増えた経緯や現在の生活状況を説明する陳述書
- 預貯金や保険、自動車、不動産などを整理する財産目録
- 世帯の収入と支出を月ごとに整理する家計状況収支表
弁護士に依頼する場合でも、本人が事実関係や家計の内容を伝え、資料を確認する必要があります。弁護士が書類を作成する部分があっても、内容をすべて任せたままにするのではなく、提出前に自分でも確認することが重要です。
家計状況収支表に記載する一般的な内容

家計状況収支表は、世帯に入ってくるお金と、生活のために支払ったお金を月ごとに整理する書類です。単に収入と支出の合計を記入するだけでなく、現在の生活状況や家計の実態が分かるようにまとめることが求められる場合があります。
裁判所が公開している記載例には、申立人と同一家計の世帯について、申立前の直近2か月分の収入と支出を月ごとに記載する例があります。一方で、対象期間や様式は裁判所によって異なる可能性があるため、「事前に2か月分」または「事前に3か月分」とは断定できません。
収入欄に記載することがある項目
収入欄には、世帯へ実際に入った金額を、項目ごとに分けて記載します。一般的には、次のような収入が考えられます。
- 給与や賞与
- 事業収入
- 年金
- 児童手当や各種給付金
- 失業給付や傷病手当金
- 家族から受け取った生活費
- 養育費
- 副業による収入
- その他の臨時収入
給与については、支給総額ではなく手取り額を書く様式もあります。交通費、立替金、会社からの精算金などが含まれている場合は、どのように記載するか担当者へ確認しておくと準備しやすくなります。
家族と同居していても、同じ家計で生活しているとは限りません。反対に、住民票上の世帯が別でも、実際には生活費を出し合っている場合があります。同居家族の収入をどこまで記載するかは、住民票だけで判断せず、実際の家計状況を担当者へ伝えたうえで確認してください。
支出欄に記載することがある項目
支出欄には、日常生活で実際に支払った金額を記載します。一般的には、次のような項目があります。
- 家賃や住宅ローンなどの住居費
- 食費
- 電気、ガス、水道などの光熱費
- 携帯電話、インターネット、固定電話などの通信費
- ガソリン代、駐車場代、公共交通機関の運賃などの交通費
- 自動車ローン、車検、自動車保険などの車両関係費
- 生命保険、医療保険、損害保険などの保険料
- 医療費や薬代
- 衣類や日用品の購入費
- 保育料、授業料、教材費などの教育費
- 交際費や娯楽費
- 税金や社会保険料
- 家族への仕送り
- 借入金やクレジットカード利用分の返済
- 積立金や会費
- その他の臨時支出
支出を少なく見せるために省略したり、反対に大まかな金額を多めに記載したりするのではなく、通帳、領収書、請求明細などを確認しながら、実際に支払った金額へ近づけることが大切です。
収入と支出が合わない場合の考え方
収入と支出を整理すると、計算上の残額と、実際に手元へ残っている金額が合わないことがあります。現金での買い物、家族間のお金の受け渡し、口座から引き出した後の使途などが記録されていないことが主な原因として考えられます。
金額が合わない場合は、無理に数字を調整するのではなく、次の資料を見直します。
- 銀行口座の入出金履歴
- クレジットカードの利用明細
- 電子マネーやスマートフォン決済の履歴
- 家賃や公共料金の請求書
- 医療費や学費などの領収書
- 家族へ渡した生活費の記録
それでも不明な支出が残るときは、推測で埋めず、「現金支出の内訳を正確に確認できない」など、分かっている範囲を担当者へ説明してください。どの程度の補足が必要かは、案件や提出先によって異なります。
家計状況収支表を書いた私の体験談

ここからは、公的な制度説明ではなく、私が自己破産について相談した際の個人的な体験です。同じ方法がすべての人に当てはまるわけではありません。
最初は毎月の支出を正確に把握できていませんでした
私の場合、相談前は毎月いくら使っているのかを細かく記録していませんでした。家賃や光熱費のような固定費は分かっていても、食費、日用品、現金での買い物などは、月の合計額を早めには答えられない状態でした。
家計状況収支表を書くために通帳や明細を見直してみると、少額の買い物や口座からの引き出しが積み重なっていることに気づきました。自分では節約しているつもりでも、記録を残していない支出が多く、家計を説明する難しさを感じたことを覚えています。
通帳とカード明細を月ごとに並べると整理しやすくなりました
私が整理しやすいと感じたのは、最初から申立書へ直接書き込まず、月ごとに収入と支出をメモへ書き出す方法でした。
まず給与などの入金を確認し、次に家賃、光熱費、通信費、保険料など、口座から自動的に引き落とされている支出を記入しました。その後、カード明細や現金での支出を加えていくと、家計全体のお金の流れが少しずつ見えるようになりました。
ただし、私が利用した書式や整理方法が、現在のすべての裁判所や法律事務所で採用されているわけではありません。実際に作成するときは、渡された書式と説明を確認する必要があります。
分からない金額を自己判断で埋めないようにしました
家計を整理していると、何に使ったのか思い出せない現金の引き出しもありました。そのような項目を、自分の判断で食費や日用品費へ振り分けることには不安がありました。
私の場合は、確認できた金額と確認できない部分を分けて、相談時にそのまま伝えました。担当者へ質問したことで、どの資料を追加で確認すればよいか、どのように説明すればよいかを整理できました。
家計状況収支表は、きれいな数字を作るためのものではなく、実際の生活状況を説明するための資料だと感じました。数字が合わない場合や書き方が分からない場合は、提出前に専門家へ確認することが大切です。
家計状況収支表を書くときに確認したいポイント

家計状況収支表には、単純な記入漏れだけでなく、家計の範囲や対象期間に関する判断が必要になることがあります。自己判断だけで完成させず、担当者の説明と照らし合わせながら作成してください。
指定された期間と書式を最初に確認する
裁判所の公開資料には、家計収支表を2か月分用意する例があります。しかし、申立先、案件の内容、依頼先の方針によって、異なる期間の記録を求められる可能性があります。
作成を始める前に、次の点を確認しておくと手戻りを減らしやすくなります。
- 何か月分の家計を記載するのか
- 指定された書式があるか
- 本人だけでなく同一家計の家族も対象になるか
- 税込金額と手取り金額のどちらを書くか
- 添付する通帳や明細の対象期間
- 現金支出をどの程度細かく分けるか
世帯全体のお金の流れを確認する
家計状況収支表では、申立人本人だけでなく、同じ家計で生活する家族の収入や支出を記載する場合があります。裁判所の記載例にも、申立人と同一家計の世帯全体について記載する案内があります。
ただし、「同居しているため事前に収入を合算する」「住民票が別だから記載しなくてよい」とは限りません。生活費を誰が負担しているのか、家賃や光熱費を分担しているのかなど、実際の生活状況を担当者へ伝えて確認してください。
借入れやカード返済も隠さず記載する
家計状況収支表の対象期間中に、消費者金融、銀行カードローン、クレジットカードなどへ返済している場合は、その金額をどの欄へ書くか確認する必要があります。
返済を続けていることを知られたくないと感じる場合もあるかもしれませんが、特定の借入先だけを省略すると、通帳やカード明細との間に食い違いが生じる可能性があります。返済の継続や停止を含めた対応は、債権者や契約状況によって異なるため、自分だけで判断せず弁護士などへ相談してください。
資料と記載内容に食い違いがないか確認する
家計状況収支表へ記載した給与、家賃、保険料、返済額などは、給与明細、通帳、契約書、カード明細などと照合される場合があります。
札幌地方裁判所が公開している申立書の留意事項でも、収入状況や債務総額などについて、ほかの記載内容と矛盾がないか確認するよう案内されています。
金額に違いがあるときは、意図的に数字を合わせるのではなく、その理由を確認します。たとえば、給与明細の支給月と実際の入金月が違う、家族が一部を負担している、後日返金された支出がある、といった事情も考えられます。
相談前に準備しておくと家計を説明しやすくなる資料

家計状況収支表をいきなり完成させようとすると、収入や支出の確認に時間がかかることがあります。相談前には、現在手元にあるものだけでも、月ごとにまとめておくと説明しやすくなります。
- 使用しているすべての預貯金通帳
- インターネット銀行の取引履歴
- 給与明細や年金額が分かる書類
- 源泉徴収票や確定申告書
- クレジットカードの利用明細
- 電子マネーやスマートフォン決済の履歴
- 家賃、光熱費、通信費などの請求書
- 保険証券や保険料の明細
- 借入先から届いた請求書や督促状
- 自動車や住宅に関する契約書
- 家族から受けている援助の金額が分かる記録
資料がすべてそろっていなくても、相談できないとは限りません。紛失している資料や取り寄せ方が分からない資料がある場合は、その状況を相談先へ伝えてください。
裁判所や法テラスの公的情報を確認する

破産申立てに使う書式や必要書類は、申立先の裁判所によって異なる場合があります。裁判所の公式サイトでは、地域ごとに申立書、債権者一覧表、財産目録、家計収支表などが公開されていることがあります。
裁判所が案内する破産手続は、裁判所が開始を決定し、必要に応じて破産管財人が財産を換価して債権者へ配当する手続です。財産の状況などによっては、破産管財人を選任しないまま手続が終了する場合もあると案内されています。個別の手続や見通しについては、専門家または申立先の裁判所へ確認してください。
法テラスの民事法律扶助は、一定の収入や資産などの条件を満たす人を対象として、無料法律相談や弁護士・司法書士費用の立替えを行う制度です。利用できるかどうかは審査によって判断されるため、収入や家族人数だけで利用の可否を断定することはできません。
家計状況収支表は提出前に人の目で確認してもらう

家計状況収支表は、収入と支出を記入するだけに見えますが、同一家計の範囲、臨時収入の扱い、家族が負担している費用、借入金の返済など、判断に迷いやすい項目があります。
インターネット上の記入例や自動作成された文章だけを根拠に提出するのではなく、完成後は担当の弁護士や司法書士など、人の目で確認してもらうことが大切です。少なくとも、次の内容を確認してもらいましょう。
- 使用している書式が申立先に対応しているか
- 記載する期間が合っているか
- 同一家計として扱う家族の範囲が適切か
- 収入や支出に記載漏れがないか
- 通帳や明細と数字が食い違っていないか
- 追加で必要となる証明資料がないか
分からない項目を空欄のまま提出したり、推測した数字で埋めたりする前に、担当者へ質問してください。事情を正確に説明することが、書類を適切に整理するための第一歩になります。
家計状況収支表の書き方についてのまとめ

家計状況収支表は、自己破産の申立てを検討する際に、世帯の収入と支出を整理するために使われることがある書類です。収入には給与、年金、公的給付、家族からの援助などを、支出には住居費、食費、光熱費、通信費、医療費、保険料、借入金の返済などを記載するのが一般的です。
ただし、書類の名称、対象期間、記載項目、添付資料は、裁判所や案件によって異なる可能性があります。過去の記事やほかの地域の書式だけを参考にせず、申立先の裁判所が公開する最新の案内と、担当者から渡された書式を確認してください。
私自身も、家計状況収支表を作る過程で、日常の支出を正確に把握できていなかったことに気づきました。通帳やカード明細を月ごとに確認し、分からない部分はそのまま相談することで、少しずつ家計の状況を整理できました。
書類をきれいに見せることよりも、実際のお金の流れを正確に伝えることが大切です。書き方に迷った場合は自己判断で数字を調整せず、弁護士、司法書士、法テラス、申立先の裁判所などへ確認しましょう。
免責事項
この記事は、筆者の個人的な体験と、裁判所および法テラスが公開している一般情報をもとに作成したものです。特定の法律手続、免責の可否、必要書類、費用、期間、結果などを保証するものではなく、法律上の助言を目的としたものでもありません。
自己破産に必要な書類や家計状況収支表の書き方は、申立先の裁判所、居住地域、世帯構成、財産や債務の状況、依頼する専門家などによって異なる場合があります。実際の手続きを検討するときは、裁判所や法テラスの最新情報を確認し、弁護士や司法書士などの専門家へ個別に相談してください。