自己破産を検討している方のなかには、「現在使用している自動車を必ず手放さなければならないのだろうか」と不安を感じている方もいると思います。
通勤や通院、家族の送迎などに自動車を使用している場合、手放した後の生活まで考えると簡単には判断できません。自動車ローンが残っている方は、車そのものの扱いだけでなく、ローン会社との契約がどうなるのかも気になるところです。
ただし、自己破産を申し立てたからといって、すべての自動車が一律に処分されるとは限りません。自動車の名義、査定額、ローンの残額、所有権留保の有無、申立てを行う地域の裁判所の運用などによって、確認される内容が異なる可能性があります。
この記事では、私が自己破産の準備をしたときの体験談と、法テラスや裁判所が公開している一般的な情報を分けて紹介します。個別の自動車を残せるかどうかを判断する記事ではないため、実際の手続きについては、申立てを予定している地域の裁判所や弁護士などに確認してください。
自己破産をすると自動車を必ず手放すとは限りません
法テラスの「自己破産すると、自家用車は必ず処分されるのですか」という案内では、相当な交換価値のある自動車は、破産手続の性質上、原則として換価の対象になると説明されています。
一方で、実際にどの程度の価値がある自動車を換価するのかについては、各地方裁判所の取扱いが異なることもあるとされています。そのため、「査定額が一定額以下なら必ず残せる」「古い車なら査定書は絶対に不要」と一律に判断することはできません。
参考:法テラス「自己破産すると、自家用車は必ず処分されるのですか」
自動車の交換価値が確認されることがあります
自己破産の手続きでは、申立人が所有している財産の内容や価値を裁判所に申告します。自動車も、財産状況を確認する対象の一つです。
確認される可能性がある主な項目として、次のようなものが挙げられます。
- 車種や年式
- 初年度登録年月
- 購入時期と購入価格
- 現在の名義人
- 車検証上の所有者と使用者
- ローン残額
- 所有権留保の有無
- 現在の査定額
- 自動車を必要としている事情
裁判所が公開している財産目録の書式でも、車名、購入金額、購入時期、年式、所有権留保の有無、評価額などを記載するよう案内されている例があります。
査定額だけで最終的な結論を出せない場合があります
元の記事では「査定額が20万円を超える場合は処分される」と説明していましたが、実際の取扱いを一つの金額だけで断定するのは適切ではありません。
自動車の評価額は重要な確認項目ですが、申立てをする裁判所の運用、他の財産の状況、ローン契約、事件が管財事件になるか同時廃止事件になるかなども関係する可能性があります。
東京地方裁判所の案内では、管財事件になるか同時廃止事件になるかは裁判所が判断すると説明されています。そのため、自分で査定額だけを見て手続きの種類や自動車の扱いを決めつけず、専門家へ資料を見せたうえで確認することが大切です。
自動車の査定書を求められることがあります
自動車を所有している場合、車検証や登録事項等証明書の写しに加えて、中古車買取店などが作成した査定書や見積書を求められることがあります。
ただし、査定書を提出する条件は全国で完全に統一されているとは限りません。裁判所が公開している案内を比較しても、初年度登録から何年以内の自動車に査定書を求めるかについて違いがあります。
裁判所ごとに査定書の提出基準が異なる場合があります
例えば、盛岡地方裁判所の資料には、初年度登録から国産普通自動車で6年、国産軽自動車やバイクで4年が経過したものは、一定の場合に査定書の添付を省略できる旨の記載があります。
一方、札幌地方裁判所の必要書類一覧では、原則として国産車は初年度登録から10年以内の場合に査定書を提出するよう案内されています。また、新潟地方裁判所の案内では、初年度登録から5年以内の自動車について査定書を提出する例が示されています。
このように基準が異なるため、元の記事にあった「普通車は5年以内、軽自動車は4年以内」といった条件を、全国共通のルールとして扱うことはできません。
申立て前には、申立てを予定している裁判所の最新の書式や必要書類一覧を確認し、不明な点は依頼する弁護士に確認することが重要です。
参考:新潟地方裁判所「破産手続開始及び免責申立書添付資料チェック表」
古い自動車でも査定を求められることがあります
年式の古い自動車であっても、車種や状態、中古車市場での価値などによっては査定書の提出を求められる可能性があります。
特に、購入時の価格が高い車、外国車、希少性のある車、人気の高い車種などは、年数が経過していても一定の価値が残っていることがあります。また、裁判所や代理人が財産状況を正確に確認するため、個別に査定を求めることも考えられます。
そのため、年式だけを理由に「査定書は必要ない」と自己判断せず、車検証などの資料を相談時に持参し、必要な対応を確認することが望ましいでしょう。
自動車の査定書を提出することになった私の体験談
ここからは、一般的な制度説明ではなく、私が自己破産の準備をしたときの体験談です。申立てを行う地域や自動車の状態によって対応は異なるため、同じ結果になるとは限りません。
年数が経過した自動車でも査定を求められました
私が手続きを準備した際に所有していた自動車は、初年度登録から一定の年数が経過していました。そのため、最初は査定書までは必要ないのではないかと考えていました。
しかし、実際には自動車の現在価値を確認するため、査定を受けて資料を準備するよう求められました。中古車を扱う事業者に相談し、車種、年式、走行距離、車両の状態などを確認してもらったうえで、査定額がわかる書類を用意しました。
この経験から、年式だけで提出の要否を判断するのではなく、担当する専門家の指示に従って準備することが大切だと感じました。
車検証やローンの資料をまとめておくと相談しやすくなりました
相談時には、自動車の名義やローンの状況について複数の確認を受けました。口頭だけでは正確に説明しにくいため、車検証、ローン契約書、返済予定表などをまとめておくと話が進めやすくなりました。
特に、車検証には「所有者」と「使用者」が別々に記載されている場合があります。自分が日常的に使用している車でも、所有者欄にローン会社や販売会社が記載されていることがあるため、事前に確認しておく必要があると感じました。
私の場合は、必要な資料を一度にすべて用意できたわけではありません。後から追加提出を求められたものもあったため、最初から完璧にそろえようとせず、まず手元にある書類を相談先へ見せる方法でもよいと思います。
自動車ローンが残っている場合に確認したいこと
自動車ローンが残っている場合は、自動車の査定額だけでなく、車検証上の所有者やローン契約の内容を確認する必要があります。
元の記事には「ローン会社名義の車は財産ではなく債務である」と記載されていましたが、実際の扱いは契約内容によって異なる可能性があるため、単純には判断できません。
車検証の所有者欄と使用者欄を確認します
ローンで購入した自動車では、代金を完済するまで販売会社や信販会社が所有権を留保している場合があります。この場合、車検証上の所有者と使用者が異なることがあります。
札幌地方裁判所の申立書作成案内でも、所有権留保が付いている自動車について、被担保債権額やオーバーローンであるかどうかを確認するよう案内されています。
ただし、車検証上の名義だけで自動車の取扱いが確定するとは限りません。ローン契約書の内容、登録名義、完済状況などを確認したうえで判断される可能性があります。
ローン会社が自動車の引き揚げを求める可能性があります
所有権留保がある自動車についてローンの返済が停止すると、契約に基づき、ローン会社や販売会社から自動車の返還を求められる場合があります。
自己破産を申し立てると必ずその場で車が引き揚げられると断定することはできませんが、ローンが残っている車を今後も使用できると自己判断することも避けたほうがよいでしょう。
自動車が仕事や通院に欠かせない場合は、その事情も含めて早めに弁護士へ伝えることが大切です。ただし、生活に必要であることだけを理由に、必ず自動車を残せるとは限りません。
ローン残額と査定額の関係も確認されることがあります
ローン残額が自動車の査定額を上回っている状態は、一般にオーバーローンと呼ばれることがあります。反対に、査定額がローン残額を上回っている場合は、自動車に一定の経済的価値が残っている可能性があります。
ただし、具体的にどのように計算され、破産手続でどのように扱われるかは、契約内容や個別の事情によって異なる可能性があります。
相談前には、次の資料を用意しておくと状況を説明しやすくなります。
- 自動車検査証または自動車検査証記録事項
- 自動車ローンの契約書
- 最新のローン残高がわかる書類
- 返済予定表
- 自動車の査定書や買取見積書
- 自動車税や自動車保険に関する資料
申立て前の名義変更や売却は自己判断で行わないことが大切です
自己破産を検討している段階で、「家族名義に変更すれば車を残せるのではないか」「申立て前に売却しておけば問題にならないのではないか」と考える方もいるかもしれません。
しかし、破産手続では、申立て前の財産処分や名義変更についても確認されることがあります。財産を隠す目的や債権者を害する目的があると判断された場合、手続きに重大な影響を与える可能性があります。
家族への名義変更でも経緯を説明する必要があります
家族間の名義変更であっても、変更した時期、代金の支払い、実際の使用者、変更した理由などを確認されることがあります。
正当な理由があれば必ず問題にならないと断定することも、名義変更をしただけで必ず免責が認められなくなると断定することもできません。事実関係を正確に説明し、専門家に判断してもらうことが必要です。
自動車を売却する必要がある場合も、売却代金の使い道を含め、手続きを依頼する弁護士へ事前に確認したほうが安心です。
財産を隠さず正確に申告することが重要です
新潟地方裁判所の案内では、申立書には申立時の状況を正確かつ正直に記載し、書くべきことを隠すと、破産手続開始決定や免責許可決定を受けられず、不利益を受けることがあると説明されています。
また、大阪地方裁判所の案内でも、財産を隠したり、破産管財人の調査に虚偽の回答をしたりする行為は、免責不許可事由の例として挙げられています。ただし、免責不許可事由がある場合でも、あらゆる事情を考慮して裁量免責が認められることがあるとされています。
名義変更や売却をすでに行っている場合は、その事実を隠すのではなく、契約書、振込記録、売却代金の使途がわかる資料などを準備し、相談時にそのまま説明することが大切です。
自動車を残したいときに相談前に準備したいこと
自動車を残せるかどうかは、車の価値や契約関係だけでなく、裁判所の運用などによっても異なる可能性があります。そのため、相談前に結論を決めるのではなく、判断に必要な情報を整理しておきましょう。
自動車に関する書類を集めます
まずは、現在所有または使用している自動車に関する資料を集めます。手元にない書類があっても、用意できたものから相談先へ提示してください。
- 車検証や自動車検査証記録事項
- 購入時の契約書や注文書
- ローン契約書と返済予定表
- 現在のローン残高証明書
- 査定書や中古車買取店の見積書
- 自動車保険の証券
- 自動車税の納税通知書
- 修理や故障の状況がわかる資料
申立てをする裁判所によっては、車検証だけでなく査定書などの提出も必要になる可能性があります。依頼する弁護士から指定された書類を優先して準備しましょう。
自動車が必要な理由を具体的に整理します
自動車を生活上必要としている場合は、単に「ないと困る」と伝えるだけでなく、使用目的を具体的に整理しておくと相談しやすくなります。
- 勤務先まで公共交通機関で通えるか
- 早朝や深夜の勤務があるか
- 仕事で自動車を使用しているか
- 本人や家族の通院に使用しているか
- 家族の介護や送迎に必要か
- 居住地域の公共交通機関の状況
- 自動車がなくなった場合の代替手段
これらの事情を伝えたからといって、自動車を必ず残せるわけではありません。ただし、専門家が今後の生活を含めて対応を検討するための参考情報になります。
自動車以外の財産や債務も隠さず伝えます
自動車の取扱いは、自動車だけを切り離して判断できない場合があります。預貯金、保険、退職金見込額、不動産、今後受け取る予定の財産なども含め、全体の財産状況を説明することが必要です。
自動車ローンのほかに借入先がある場合は、債権者名、残高、契約番号なども整理しておきましょう。債権者一覧表については、以下の記事でも紹介しています。
自己破産と自動車について公的情報を確認する方法
自己破産の必要書類や自動車の査定方法は、インターネット上の体験談だけでなく、申立てを予定している裁判所が公開している最新情報を確認することが大切です。
申立てを予定している地方裁判所の案内を確認します
裁判所のウェブサイトでは、破産・免責申立書、財産目録、必要書類一覧、記入例などが公開されている場合があります。
検索するときは、「地域名 地方裁判所 個人破産 必要書類」「地域名 裁判所 破産 自動車 査定書」などの言葉を使うと、関連する資料を見つけやすくなります。
ただし、ウェブサイト上の資料が最新の運用と一致しているか判断しにくい場合もあります。実際に提出する書類については、依頼する弁護士や裁判所の窓口で確認してください。
法テラスの相談窓口や弁護士への相談を検討します
法テラスでは、自己破産や債務整理に関する一般的な情報が公開されています。また、収入や資産などの条件を満たす場合は、無料法律相談や弁護士・司法書士費用等の立替制度を利用できる可能性があります。
利用条件や立替額、返済方法などは個別の審査や事件の内容によって異なる可能性があるため、公式情報を確認したうえで相談してください。
自己破産と自動車についてよくある疑問
査定額が低ければ必ず自動車を残せますか
査定額が低いことは重要な情報の一つですが、それだけで自動車を残せると断定することはできません。裁判所の運用、ローンや所有権留保の状況、ほかの財産の内容なども関係する可能性があります。
査定書や車検証などを弁護士へ見せ、申立て予定地の取扱いを確認してください。
仕事や通院に必要なら自動車を残せますか
生活や仕事に必要である事情は、相談時に必ず伝えておきたい情報です。ただし、必要性があることだけで処分の対象外になるとは限りません。
自動車の価値、代替交通手段、契約関係などを含めて個別に検討される可能性があります。
家族名義の自動車も申告する必要がありますか
家族名義の自動車が直ちに本人の財産として扱われるとは限りません。ただし、購入代金を誰が負担したのか、実際に誰が管理・使用しているのか、申立て前に名義を変更していないかなどを確認される場合があります。
本人や家族だけで判断せず、名義や購入経緯を示す資料を専門家へ見せてください。
自己破産の相談前に自動車を売却してもよいですか
相談前の売却が必ず禁止されるとは限りませんが、売却価格や代金の使途によっては、手続きの中で詳しい説明を求められる可能性があります。
特定の人へ著しく安い価格で譲ったり、売却代金の使途を説明できなかったりすると、問題になるおそれがあります。売却や名義変更を考えている段階で、先に弁護士へ相談することが大切です。
自己破産で自動車を手放すかどうかは資料をそろえて確認しましょう
自己破産を申し立てた場合でも、自動車を必ず手放さなければならないとは限りません。ただし、交換価値のある自動車は換価の対象となる可能性があり、ローンや所有権留保がある場合は、契約に基づいて返還を求められることも考えられます。
また、査定書を提出する年式などの基準は、裁判所によって異なる場合があります。「古い車だから申告しなくてもよい」「一定額以下なら絶対に残せる」と自己判断するのは避けましょう。
相談前には、車検証、ローン契約書、残高がわかる資料、査定書などを用意し、自動車が必要な事情も整理しておくと相談しやすくなります。
名義変更や売却を検討している場合は、先に専門家へ相談し、財産状況や過去の取引を正確に説明することが重要です。
免責事項
本記事は、筆者の体験談および法テラスや裁判所が公開している一般的な情報をもとに作成したものであり、特定の事案に対する法律上の判断や助言を行うものではありません。自動車を残せるかどうか、査定書が必要かどうか、ローン中の自動車がどのように扱われるかは、契約内容、財産状況、申立てを行う裁判所の運用などによって異なる可能性があります。手続きの結果、費用、期間、免責の可否を保証するものでもありません。実際に自己破産を検討する際は、申立てを予定している地域の裁判所、法テラス、弁護士などへ最新情報をご確認ください。